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片方の目が潰れた顔……。
それが写真に写り込んでいる、と横田は言っていた。
そんな、バカな。
それは、あの女の死に様ではないか。
いや、横田は事件の報道か何かでその死に様を知っているんじゃないか。
見聞きした情報を取り入れた嘘をついて、俺たちを驚かせようとしているだけかもしれない。
「ちょっと……見せてみろよ」
スマホを借りると、俺は写真を覗き込んだ。
男3人の背景に目を見やる。
親子が轢かれた道だ。
轢いたのは……。
じっくり目を凝らし確認するも、ただの薄暗い道だ。
女の幽霊の姿など見当たらない。
「なんだよ、嘘つくなよ横田。
女なんて写ってないじゃん。驚かせるなよ」
「女? 女って何だ。女がいるなんて言ってないだろ。
ここだよ、この顔を見てみろ」
「は?」
横田が指差す箇所に俺は目をやった。
指し示されたのは、俺の顔だ。
そんなはずはない、俺の顔。
その顔は片目が抉られ、空いた穴から血が滴り落ちていた。
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