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 ゾンビ達は、呆然となってその様子を眺めた。それでも、人波に乗った男が三メートル程移動してその中へ姿を消すと「お、追えっ!」慌てた様子でステージを飛び降り、後を追う。 「助けるぞ!」  全身を緑色に染めたベースボーカルの男が言い、ドラムの男とそこへ続いた。  激しいモッシュが続く暗がりの中、逃げ回るギタリストに、追うゾンビ達。それを阻止しせんとする二人の男による追走劇が突如として始まった。 「おい、押すなよ!」 「いてぇな、この野郎!」 「きゃあ! 顔に粉が!」  罵声とゾンビパウダーがあちこちで飛び交い、連鎖的にいさかいが続発。興奮は拡散し、それを抑える術を失った群衆は、暴れる事を目的として暴れだす。  殴り合いを始める者もいれば、酔いに任せてステージへよじ登り、自由勝手に楽器を掻き鳴らす者もいた。  事態の収拾を試みたスタッフ達は、頬に一発受けたところで暴徒の仲間入りを果たす。そうして秩序は失われ、場内は混沌たる様相を呈した。
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