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と…ともあれ…とにかく。
この猛烈な雨が止むまでの…一週間の辛抱、である。
その日数ののちには、この悪天候は終わる…とのことは、この私がこの耳で盗み聴きしている。
しかし…例の『神』とかいう輩は、一体全体、どういうつもりであるのか?
まず、一週間の猛雨によって、洪水で地上を一掃する…だと?
さらには、お気に入りのノアにだけ、その予定を伝えたのみで…他の生き物はあまねく、皆殺し…だと?
さらに言うなら…あの、ノアと言う男。
神の預言を受けたものが、自分だけであったのを良いことに…自分とその家族と、気に入りの獣らだけを永らえさせようなどと…あさましいにも、程が有りはしないか…?
慈悲深き神…だと?
『善人』ノア、だと…?
全くもって…酷い冗談、ではある。
「…しっかし、まあ、あっちは、箱の中での〜んびり、…こっちは、濡れねずみのざまで、必死に船の水の掻き出し、とか…世の中ってのは、つ、つくづく、不公平に出来てるもんですねぇ」
と…ヨースフ、息を切らし切らし。
全く…その通り、ではある。
そもそも、そのような不公平が存在したせいで、あらゆる『悪』が生じていたのではあるまいか…?
言ってしまえば…そんなような、不公平に満ち満ちた不完全な世界を造ったのは、神の野郎自身であるのに…。
その出来が、少々気に入らないからと言って…大雨と洪水で、全てを無かったことにしよう、などと…?
全くもって、阿呆の仕業としか言いようがない…!
「でも、その、神の阿呆をも、えこひいきのノアの野郎をも…おれらは、出し抜いたって、そういう訳、ですよねぇ?」
など…ヨースフ、ひひひひひ、とほくそ笑みつつ。
そう。
言うなれば…そういうこと。
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