モルモットの防災訓練

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何十匹というモルモットに仮性ペスト菌を注射し続ける。 「ゲホッ、ゴホッ……」 何だか、モルモットに注射を打つと自分の咳がひどくなる。自分の気管支炎は心因性のものかも知れない……。そんな気がした。 僕も動物が好きなので、研究のためとは言えモルモットに菌を注射するのに、無意識のうちに葛藤を抱えているようだ。そんな葛藤がこの咳として顕れているのかも知れない。 ◇ 午後のニュースです。 アリフカを中心に猛威を奮うボラエ熱の患者は、ついに一億人にのぼりました。アリフカ外の国々への感染拡大も、非常に危惧されます。 国際ウィルス研究所は事態の収束に向けて、特効薬の開発を急いでいます。 ◇ その夜。フルーツジュースを飲んだ僕は、どうしても寝ようという気が起こらなかった。 咳は治まった。だが、寝てしまうと、二度と目覚めない……。そんな気がした。 おでこに冷んやりシートを貼り、冴えた目でPC画面を見て、大学から配布されていたIQテストを解く。何だか、いつもと違う。図形が吸い込まれるように繋ぎ合わされ、見る見る解けてゆく。 テストでは、かつてないほどの極めて高いIQを記録した。ふとPC画面から目を逸らすと、視界が極めてクリアになっていた。僕は普段、視力は0.1もなくて眼鏡の着用が必須なのだが、裸眼で何もかもがクリアに見えるのだ。試しに、視力を簡易測定してみると、何と1.5にもなっていたのだった。 翌朝。 真っ先に、僕は病院で診察を受けた。 「調子は、いかがですか?」 「はい。すっかり咳も出なくなり、熱も下がりました」 「ほう、それは何よりです」 医師は、カルテに書き込んでいる。 「それに……」 僕は付け加えた。 「IQと視力が飛躍的に向上しました」 「IQと視力!?」 医師は意外そうに、目を丸くしてこちらを見た。 「どうかしましたか?」 「いや……分かりました」 カルテにはっきりと『IQと視力の劇的向上』と書き込まれるのが見えた。 「ところで、簡単な健康診断をしたいと思いますので、血液検査をさせていただいていいですか?」 僕は血液検査のため、採血をされた。
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