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清掃・除菌という除霊
楓は竜童の勧めに従って
呼吸法・瞑想・ヨガを毎日「行う」というだけでなく、呼吸法・瞑想・ヨガをやる中での「変化や具体的な手応えを記録する」ようにした。
スケジュール帳形式の日記も継続してつけるようにした。
(これで先生が絵師活動期間の間もただ雑用を押し付けられるだけでなく訓練も続けられるんだ)
と思って満足したのだった。
そう思って喜んでいる間にも霊能の方の仕事がイケメン先生から回ってきた。
「明日からまた絵師活動に入るから今月の霊能活動は今日が最後だ。
何度も言うが『よく見ていろ』。
見なければ疑問も持てないし、疑問も持てなければ概念も生じない。
概念が生じなければ、既存の認識の中で物を考え続けるしかなくなる。
そうなると原因と結果の繋がりを知る事も出来ずに欺瞞に陥る」
竜童がそう告げると
早速、竜童と正志と楓で現場に赴く事になった。
仕事の概要を理解しておこうと思い、楓は今回の依頼内容を質問する。
「今回もまた殺人現場ですか?」
と、楓が尋ねると
「いや、今回は事故現場だよ。
見通しも良いのに何故か事故が多発する現場のお祓いだね」
と正志が答えた。
「という事は『残留思念』の『調伏』ですね」
と楓が言うと
「それも有るが、自然界では菌も豊富だからな。
既に菌の『パターン模倣』で『事故を引き起こす脳波状態』がその近辺に量産されてる可能性が高い。
その場合は模倣品の全てを『調伏』して回るのは面倒だ。
元凶の『残留思念』を『調伏』した後は、辺りの草刈りや清掃をした後に聖水を撒く」
と竜童が答えた。
斯くして現場に到着した。
道路脇には蓋付きの側溝があり、近くの民家の生活排水が流れてきているのか、側溝の中の水から生ゴミのような匂いがしていた。
側溝よりも更に道脇には枯れ草が刈り取られるでもなく横倒しになって生えていた。
虫達の寝床にでもなっていそうだ。
地形の所為もあるのか
天気の所為もあるのか
妙にジメジメしている。
(確かに菌とか菌の胞子みたいなのが沢山ウヨウヨしてそう…)
そう考えている間にも『ピリピリチクチクする感じ』が楓の中に入り込んで来ようとしていた。
なので敢えてそれを受け止めると
風邪のひき始めみたいな
悪寒と頭の働きが鈍る感じが起きた。
薬を飲んだ訳でもないのに
薬を飲んで眠たくなったような眠気が起きた。
確かに『パターン模倣』が起きてるようだ。
竜童の指示した通りにその現場の処理が始まった。
楓が「よく見よう」と念じるとその現場の景色も竜童の周りの景色も変化する。
L○NEで送ってもらった幾つかの動画を何度となく繰り返し観てきた。
それによって
『魂の粒子』
『我執の粒子』
『霊の軌跡』
『念の軌跡』
『気の動き』
などを具体的な視覚的イメージで認知する概念の枠組みが自分の中に出来ていた。
祖母の分体である霊魂存在による見え方の他に『○玉親父』効果もあるので
第六感によって察知した存在は自動的に「既存の具体的な視覚的イメージへと変換されて視覚化」されるのだ。
竜童が魂の粒子を解体する時に手刀に纏っているオーラは念と気を混ぜたようなもので出来ていたのだが。
竜童曰く
念とは情動エネルギー。
気とは認知エネルギー。
念は感情を運び
気は幻覚を運ぶ。
念は気よりも濃密で重い。
気は念よりも希薄で軽い。
普段は念と気は絡み合う二匹の蛇のように絡む事はあっても、混合する事はない。
それを混合できるようになるには
『螺旋状の水銀みたいな化け物』
(バネ状の化け物?)
を食わなければならないのだとの事。
またもゲテモノ食いの通過儀礼となるがそれによって可能になる事が増えるらしい。
念と気を混ぜて『呪力』とでも呼ぶものにすることで
「魂の粒子を解体して解放する」事も可能になるし
「他人を金縛りに掛ける」事も可能になる。
さて視覚的にはかなりスペックの上がった楓だが未だ出来ることは少ない。
「見ること」が今の専門だ。
竜童は例の呪力のオーラを出して手刀で残留思念を解体している。
それと同時に自分の魂の粒子を残留思念に向けて飛ばしている。
モールス信号のように竜童の魂の粒子が明滅を繰り返し続けると、徐々に残留思念の内部に含まれている我執も竜童の魂の粒子の明滅と同期化して明滅し出した。
その内完全に同期化して、残留思念は竜童の魂の粒子の明滅と同じ明滅を繰り返すようになった。
(調伏って客観的に見たら「同期化の強制執行」だったんだなぁ)
と楓は改めて気付いた。
そうして「元凶の残留思念の処理」が済んだので
お次は模倣品(菌)の処理。
つまり清掃による清潔化だ。
車が来てない間に道路のゴミを拾い、側溝の蓋も開けて、溝を詰まらせてる大きなゴミを回収。
道脇の草を刈って回収。
本当はすぐに燃やすのが一番だが、一般人による燃えるゴミの焼却は禁止されている。
なので車の上にキャリアーを付けて運ぶか、車のトランクに詰めてゴミを持ち帰り、地方自治体が定める方法で所定の場所に捨てるしかない。
ゴミと草を燃えるゴミに出すべく車に積んでから、草を刈った場所や側溝に聖水を振りかけた。
聖水とは「聖別した水」。
良いパターンの念を込めた水である。
(聖水の作り方は後日学ぶ事になった)
そうして楓達は無事に仕事を終えたのだった…。
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