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私は、その日、十歳の甥のマサルを連れて、SIMPLEにやって来ていた。マサルが好むので、並んで、カウンターに座るのだ。
「お待たせしました」
マスターがいつものように、私の前に、コースターを置き、グラスに入ったアイスコーヒーを置く。
「お 待 た せ し ま し たっ」
妙に強みを入れて遅めに発音し、にっこりとした顔で覗き込むようにして、マサルの前に、コースターと、アイスコーヒーを置いた。マスターは、子供用の接客も欠かさない。マスター自身も若く、私より幾分もマサルの心を掴みやすいだろう。マサルも「来たっ」と、楽しげに小さな声をあげている。
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