ハロウィン

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ハロウィン

「準備は良いか!?」 「あぁ、ばっちりだ!」 「早く行こうぜ、俺、この日を一年間ずっと待ってたんだ!」 「こら、リッチー! 無駄に暴れるのはだめだぞ。 俺達はあくまでも……」 「はいはい、わかってますよ。 もう耳にタコが出来る程聞きました。 ……さ、そんなことより早く行こうぜ!」 ライアンは、小さく首をすくめながら、威勢よく外へ飛び出したリッチーの後に続いた。 「あ、早速いやがったぜ!」 「またあいつらか…本当にしつこい…」 五人は、音を立てないよう静かに畑の隅に降り立った。 五人の視線の先には、畑のものを食い荒らす子鬼達の姿があった。 子鬼たちは、食い荒らした作物をあたりに投げたり蹴ったりしながら大はしゃぎしている。 「こらーーー!おまえ達!!」 「あ!!」 最初に気付いた子鬼が怯えた顔をして他の子鬼の背中に隠れる。 「あ!」 「わ!」 「ぎゃっっ!」 子鬼たちは、クモの子を散らすようにして、一目散に逃げて行った。 「こらーーーっ! 来年も来たら、今度こそは許さないぞ!」 リッチーは長い剣を頭上高くに振り回し、大きな声で叫んだ。 『メアリー、ロイドの畑がまたやられた。 あとのことは頼んだぞ。』 『オッケー!すぐに出動するわ。』 「なぁ、リーダー、もっと悪い奴を探そうぜ! 剣を使う機会がないんじゃ、なんのために毎日稽古してきたのかわからない。」 「最近はそんなに悪い奴はいないさ。 精霊自体がずいぶん少なくなったからな。」 「今じゃ人間の方がずっと性質が悪いぜ。」 「人間には俺達、何も出来ないし…」 ライアンは、俯くリッチーの背中を叩いた。 「何、景気の悪い顔してるんだ。 俺達は俺達にしか出来ないことをするだけ。 そうだろ、リッチー?」 「あ…あぁ、そうだな!」 リッチーの顔に明るい笑みが戻ったのを確認し、ライアンも同じように微笑んだ。 五人は、霊界の「モンスターお仕置き隊」 ハロウィンの夜は、死者は家族の元に帰ることが許されるが、悪い精霊や悪魔も人の世界に降りやすくなる日だ。 精霊たちは、この日、日ごろのうっぷん晴らしをする。 昔は、人間の子供をさらったり、家に火をつけるような奴らもいたが、最近ではそこまでの凶悪犯罪はなくなった。 しかし、その分、作物を荒らしたり動物にいたずらをする奴らが増えた。 そんな犯罪を許してはいられないと立ち上ったのが、ライアン達だ。 ライアン達の子孫はすでに途絶え、帰る家がない。 暇なハロウィンの日を有効に使いたいという気持ちもあったようだ。 彼らの配下には、メアリー達の『後始末隊』がある。 彼女達もライアン達と同じく、帰る家のない霊魂達だ。 精霊達のしでかした不始末を、出来る限り修復するのが彼女達の役目だ。 「さぁ、次、行くぞ!」 ライアンの掛け声と共に、五人は空高く舞い上がった。 ~fin.
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