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「そんな……」
彼は話してくれた。
あの時、弟さんの借金で大変なことになっていたことを。
たちの悪い金融会社から借りたせいで、借金は膨れ上がり、実家だけではなく彼のところにも激しい取り立てが来ていたことを。
あの時は、私に迷惑をかけたくなくて、わざと酷いことをして離れたのだとわかった。
「本当にすまなかった。
でも、あの時はああするしかなかった。
そうじゃないと、お前に迷惑がかかるから……」
「そんな…正直に話してくれてたら、私だって少しは……」
「おまえならそういうと思ってた。
だから、言えなかったんだ。」
その後、何年もかかってようやく借金のことが解決し、それから彼はすぐに私に連絡をくれたらしい。
だけど、私は住む所も携帯の番号もすべて変えてたからみつからなくて、それでも彼はずっと私を探し続けていたと言った。
その言葉に私の涙は止まらなくなっていた。
「由美…今、幸せなのか?
……結婚は?」
私はゆっくりと首を振った。
「ほ、本当に?
じゃ、じゃあ……俺と結婚してくれるか!?」
「え……?
あなたもまだ結婚してないの?」
「当たり前じゃないか。
俺は…おまえ以外の女と結婚する気はない。」
「……満さん……」
信じられない想いだった。
他に好きな人が出来て、非情にも私を捨てたと思ってた人が、本当はこんなにも私のことを想っててくれたなんて……
(あ、そういえば……)
彼は別れ際に確か「またいつか…」って言った。
別れを切り出したくせにおかしなことを…と思ってた。
私は十年経って、その短い言葉に込められた本当の意味を知った。
「由美…本当に長い間、ごめん。
でも、もう二度と離れることはないから。」
その言葉に、私は深く頷いた。
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