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十日前まで賑わっていた桜並木は、平日のこの時間は閑散としていた。
夕方になるとランニングする人やウォーキングをする人、犬の散歩をする人が行き来するのを深冬はベンチに座って観察するのが好きだった。
この場所は図書館にも近く、深冬にとっては心地の良い場所。
今日、入学式が終わったらランチして帰ろうと、密かにサンドウィッチを持参して楽しみにしていた。
ベンチには先に夏奈が座っていた。
深冬が隣に座ると、夏奈は大きく深呼吸をした。
「彼と別れた」
「うん」
深冬はランチボックスを広げる。
「知ってたの?」
「知らないよ」
「驚かないの?」
「何となく知ってた」
「聖巳から何か聞いてた?」
「聞いてないよ」
「海志から聞いてた?」
「何となく聞いてた」
「なんて言ってた?」
ランチの準備が整ったところで、深冬は顔を上げた。
大きく見開かれた夏奈の瞳は涙でいっぱいだった。
「はい、どぉぞ」
深冬は手作りのサンドウィッチを夏奈に手渡すと、にっこり微笑んだ。
「キヨミちゃんは何て?」
「・・・・・・好きな人ができたって」
「うん。ヒロ君も同じこと言ってたよ」
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