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「生きてるって感じ」
このセリフを聞いた夏奈は、今度は泣きながら笑った。
そして深冬から飲み物を奪うと、ゴクゴクと飲み干した。
「うん、生きてるって感じ」
そう言って急に立ち上がると深冬を見た。
「この正面の建物に聖巳の学校があるの」
そして川の向こう岸を見る。
夏奈の指す建物には人集りが見えた。
それは黒服の集団だった。スーツ姿だ。
遠くからでもその賑わいは分かった。
夏奈はおもむろに双眼鏡を取り出した。
「楽しそう・・・・・・」
そう呟くと深冬の隣に座り直した。
「立って見た方が見えるんじゃないの?」
「変な女に思われる」
泣きながら物を頬張る女は充分変だと深冬は思ったが口にしなかった。
「見える?」
「うん。見える。女子ばっかり」
「キヨミちゃん見えたら教えて」
「うん」
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