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二人は専攻が違った為、学校で会うことは殆どなかった。
深冬は読書を。
夏奈はバイトまでの時間を。
川原のベンチで過ごす生活が一ヶ月続くと、桜並木は新緑を迎えた。
天気の良い日は木漏れ日が美しかった。
そのうち雨が続くと、二人は自然に解散するかのように、深冬は一人図書館で、夏奈はバイトをして過ごす日が多くなった。
「深冬さん?」
小雨の日だった。
「キヨミちゃん」
高校を卒業して以来の再会だった。
「今日、夏奈は一緒じゃないんだ?」
「キヨミちゃんこそ今日は一人?」
「え?」
「取り巻きは?」
いつも双眼鏡をのぞいていたから深冬は知っていた。
聖巳の周りには常に女がいた。
「取り巻きって・・・・・・悪意がある言い方だなぁ」
それを見る度に泣いていた夏奈も、最近は慣れて無言で観察していた。
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