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「一般教養の井上先生の教科書を持つ手見て」
今日その授業で深冬は確認済みだった。
その指は細く長く、スッと伸びていた。
教科書を持つ手の甲は血管が浮かんでいて、目の前で傘を持つ男の手と比べた。
夏奈の好きな男の手。
夏奈の言う手の綺麗な人。
「夏奈なら大丈夫だよ」
「え?」
「彼女は恋している自分に恋しているから」
「え? どう言う意味?」
「だから、次興味のあるものを見つけたから、もうキヨミちゃんの事は追わないってこと」
一瞬、残念そうな顔をした聖巳の顔を深冬は見逃さなかった。
「ねぇ、ちょっと手触ってもいい?」
深冬は返事を聞くのを待たず、聖巳の手の甲の一番太い血管に触れていた。
手の綺麗な人がイケメンなのか。
イケメンは手が綺麗なのか。
深冬は恋人の事を考えた。
ゴツゴツして短い指。
現場で汚れた手は、爪まで真っ黒だった。
「夏奈は面食いだから、ないか・・・・・・」
最後にそう呟いた深冬を思い出し、聖巳は電話をした。
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