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「私と一緒に偵察したいと」
「おまえも気になるだろ?」
「あんたに聞かなかったら気にならなかった」
「とりあえず行こうぜ」
夏奈のバイトが終わる頃には花火も終わる。
行く事に意味があるのだろうか。
夏奈はそう思いながらも、鞄の中の双眼鏡の存在を意識した。
「ねぇ。深冬とデートって、この車?」
軽トラックに乗り込みシートベルトを着用しながら尋ねる。
「おぉ。なんで?」
「なんで? って、なんで?」
「は?」
「なんでデートに軽トラな訳?」
「これ、俺の仕事兼自家用車だし」
「これじゃぁ、ときめかない」
「ときめきって必要?」
「はぁ?」
「ときめき=好き。の勘違いじゃね?」
夏奈は黙った。
「俺、深冬にプロポーズした」
夏奈は聖巳と結婚の口約束をしていた事を思い出した。
ずっと一緒に過ごしたくて、この幸せが永遠に続くようにと。
恋人たちの約束は、魅力的な新たな刺激にあっさり上書きされた。
「結婚=女の幸せ。の勘違いじゃね?」
そう、人の気持ちは変わる。簡単に。
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