ガラケーの中の彼女

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ガラケーの中の彼女

 通信機能は切断されたはずのガラケーだった。僕の机の引き出しの中に眠っていたはずの携帯電話。  僕は今日、それを気まぐれに引っ張り出した。  それを充電器に繋いで、電源を入れてみた。ガラケーに保存していた写真なんかのデータを、僕は今使っているスマホに移動させていない。  どんな写真を保存していたかな……?  もう何年も前に使わなくなったものだったので、そんなワクワクもあった。 「わぁ、懐かしい……」  思わず、口をついて出た。  それに保存されていたのは、大学生時代の学祭の写真やサークルで行った旅行……そんな、懐かしい思い出の数々だった。  学生時代の貴重な思い出の数々……それが、携帯の中に積み重なっていた。  僕はぼんやりとそれを眺めながら、「あれ?」と一つのことを疑問に思った。  学生時代の思い出の数々……それはとっても美しく、素敵なものなのだけれど。何か、最も大事なものが抜け落ちている気がした。  それに、こんなに大事なものをスマホに移さずに、今まで机の引き出しの中にしまっていた。どうして?  その疑問が僕の頭に浮かんだ途端、頭にツーンと偏頭痛が起こった。  そして……信じられないことが起こった。  何と、そのガラケーがメール受信画面に切り替わったのだ。
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