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『仁美……会いたい! 今すぐにでも! そっちに行きたい!』
僕は思わず……なりふり構わず、そう返信した。
すると、すぐにメール受信画面に切り替わった。
『さーくん、嬉しい……そう言ってくれたら、すごく。だけれどね……さーくんは、まだ、こっちに来たらダメだよ』
そして……続けてメールを受信した。
『さーくんは、まだ、生きてる。他の子を幸せにしてあげることができる。だから……私にしてくれたように。命がけで、守ってあげて……さーくんも幸せになって』
そのメールを見て……僕の目からは堰を切ったように涙が流れた。いつまで経っても嗚咽が止まらなかった。
『仁美。ありがとう、ありがとう……』
僕がそのメールを打った時には……ガラケーは元通り、通信機能が断たれていて。送信することができなかった。
僕はあの日……卒業旅行の事故の日に仁美が亡くなって以来、激しく情緒不安定な日が続いた。仁美を守れなかった自分自身への嫌悪で、何度も自殺しようとして、入院するに至った。
だから、僕の中から仁美の記憶を消す治療が施された。その時に持っていたガラケーからも、仁美に関する全ての情報が抹消されていたのだ。
だけれども……僕はもう、全てを受け止めて前へ進まないといけない。だって、それが仁美の望みだから。
机の引き出しに大切にしまっているガラケーの写真の中の仁美は、海辺で夕陽に照らされて、いつでも僕を見て微笑んでくれている。
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