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それからどれくらい経ったのか、しばらく会話もなくただ二人並んで体育座りをしていたとき、多野屋くんが口を開いた。
「市ヶ谷さんも花火、見に来たんだよね?」
「うん。でもこれじゃあ見れないけどね」
「花火……見る?」
「へ?」
私が返事をするより先に、多野屋くんは右手を開いて正面にかざすと、何もなかったはずの白い壁にもわーん、と間抜けな効果音でも付きそうなくらい、ふにゃふにゃとした形の楕円形の穴が開く。
穴の先はどこかと繋がっているのか、白以外の色が見える。暗くてよくは見えないけど、黒っぽい色。
すると。
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