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でも、志田さんは、フルーツも頼まない。
早く他のテーブルから、『抜き』がかかんないかな?
私は黒服に、上手く付け回す様に合図を送る。
志田さんのコーラと、私のレゲパンが運ばれてくる。
形の違うグラスで乾杯。
「ユメちゃん、七夕はオールで出勤?」
「はい、その予定です。彼氏もいないので寂しいんですよー」
……稼ぎ時だっつーの。
「俺も、今は彼女いないけど。仕事忙しくてさ」
「さすが、お仕事できそうですもんね!」
……出た、仕事できますアピール。
「そうなんだよ。大きなプロジェクト任されてて。
アフリカのルワンダって知ってる?」
「知らないですぅ。物知りですね。海外?」
……缶コーヒーのWANDAしか知らないっつーの。
「そう。BCPやBPOを考えると、もうアジアは古いんだよね。
これからはアフリカの時代なんだよ」
「すごーい。最先端?」
……何すか?B何とかって。むしろTPO考えろっつーの。
「ユメちゃん、分かってるね。時代をいかに先取りするか。
俺ってアンテナ高いから、良いものとか、すぐピーンと来るんだよね」
「センス良いですよね? 服もそうだし」
……マネキン丸ごと上から下まで完コピの鴨客。
「分かる? これ友達が経営してるショップのオリジナル」
「そうなんだ、交友関係もセレブなんですね」
……そいつ連れて来いや。
だいたい、男なんてのはこの『さしすせそ』で会話すれば充分。
流石、知らなかった、凄い、センス良い、そうなんだ。
「来週、浴衣同伴、予約指名しちゃおうかな」
嘘?できれば太客ゲットしたいのに。
こいつと同伴しても、浴衣のクリーニング代にもなりゃしない。
黒服、早く、抜いてよ。
「済みません。ユメさん、ご指名です」
「あら、ごめんなさい。すぐ戻ります」
志田さんのテーブルには、体験入店の女の子がついた。
そのまま指名替えして欲しい。
「六平さん?」
驚いた。
さっきチェックアウトした六平さんが出戻っていた。
「DM送ったんだけど、接客中で先越されちゃうかなって。
来週の花火大会の日、僕と浴衣同伴してくれるかな?」
はい!太客ゲットォ♪
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