01.さしすせそ

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でも、志田さんは、フルーツも頼まない。 早く他のテーブルから、『抜き』がかかんないかな? 私は黒服に、上手く付け回す様に合図を送る。 志田さんのコーラと、私のレゲパンが運ばれてくる。 形の違うグラスで乾杯。 「ユメちゃん、七夕はオールで出勤?」 「はい、その予定です。彼氏もいないので寂しいんですよー」 ……稼ぎ時だっつーの。 「俺も、今は彼女いないけど。仕事忙しくてさ」 「()すが、お仕事できそうですもんね!」 ……出た、仕事できますアピール。 「そうなんだよ。大きなプロジェクト任されてて。 アフリカのルワンダって知ってる?」 「()らないですぅ。物知りですね。海外?」 ……缶コーヒーのWANDAしか知らないっつーの。 「そう。BCPやBPOを考えると、もうアジアは古いんだよね。 これからはアフリカの時代なんだよ」 「()ごーい。最先端?」 ……何すか?B何とかって。むしろTPO考えろっつーの。 「ユメちゃん、分かってるね。時代をいかに先取りするか。 俺ってアンテナ高いから、良いものとか、すぐピーンと来るんだよね」 「()ンス良いですよね? 服もそうだし」 ……マネキン丸ごと上から下まで完コピの鴨客。 「分かる? これ友達が経営してるショップのオリジナル」 「()うなんだ、交友関係もセレブなんですね」 ……そいつ連れて来いや。 だいたい、男なんてのはこの『さしすせそ(・・・・・)』で会話すれば充分。 流石、知らなかった、凄い、センス良い、そうなんだ。 「来週、浴衣同伴、予約指名しちゃおうかな」 嘘?できれば太客ゲットしたいのに。 こいつと同伴しても、浴衣のクリーニング代にもなりゃしない。 黒服、早く、抜いてよ。 「済みません。ユメさん、ご指名です」 「あら、ごめんなさい。すぐ戻ります」 志田さんのテーブルには、体験入店の女の子がついた。 そのまま指名替えして欲しい。 「六平さん?」 驚いた。 さっきチェックアウトした六平さんが出戻っていた。 「DM送ったんだけど、接客中で先越されちゃうかなって。 来週の花火大会の日、僕と浴衣同伴してくれるかな?」 はい!太客ゲットォ♪
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