もっと近づきたい

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もっと近づきたい

「お時間でーす」  スーツ姿の若い男が事務的にぼくと貴女をひきはがす。握手していた手が離れ、彼女の笑顔に見送られる。そのうしろにはまがまがしいものが感じられた。  彼女と触れ合える、この数秒のためにもう何度も、握手会に参加している。  それだけで良かったはずが、最近物足りなくなってきた。  人ごみの先にいる彼女の姿が見たい! もっと話がしたい! 出来るなら恋人になりたい! でもストーキングして警察に捕まるのは怖い。人生が終わってしまう。どうしよう。  そんなことを考えながら歩いていると、赤信号を見落としてしまい、横から突っ込んで来たトラックに跳ねられ、ぼくは死んでしまった……  けれど、ぼくは自由になった! これで彼女に近づき放題!  幽霊になった僕は喜び勇んでさっきの会場に戻った。すると!  彼女の周りにはたくさんのほかの幽霊たちが、まるで人ごみのように取り囲んでいた……
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