2人が本棚に入れています
本棚に追加
そこは、自分の働いている場所とは違っていた。カラオケボックスの指定された場所に入った。正面の壁には、扉があった。
こんなところ従業員にしか分からないであろう。
扉を開け、階段を降りていくと自分の仕事場と同じ風景だった。
扉の前には、無愛想な三十代に見える女性が一人座っていた。武蔵は、自分もこんな感じで座っていたんだろうと思うと、少し寂しくなった。
この女性もいずれ、この扉の先が気になるのだろう。
受付の人とは、日にち以外話さないでください、と念を押されていたので、年号と日にちだけ淡々と言う。
「20○○年 3月4日です」
そう言うと、無愛想な女性は無心に年号を打ち込み、扉を開ける。
中に入ると長い廊下が存在していた。足元にしか光がない。一定に光るそのライトは、武蔵の心臓の高鳴りを一層に大きくさせた。
先にもう一つ扉があるのを見つける。
『あそこを開ければ、過去を変える事ができる』
そんな一心で、足を一歩一歩噛みしめるように踏み出した。
最初のコメントを投稿しよう!