最後の受付

13/15
前へ
/15ページ
次へ
 『僕は、何もしませんでした』  あの、扉から戻って来た人物を思い出した。ここで何もしなければ、今までの生活に戻れる。足が少し止まる。  しかし、今までの生活に戻る気はなかった。あの退屈な自分に。  武蔵は、一直線に高校生の武蔵に向かって走っていく。 「おい、そこのお前!」 「はい?」高校生の武蔵は不機嫌そうに、武蔵を見る。 「お前、もっと冷静になれ!」武蔵は大声で発した。 「はい?なんなんですか?」 「未来のお前だ。お前はこれから、親父と口論になって、親父を突き飛ばして、寝たきりにさせてしまう。そんなお前に未来はないぞ!」 「意味わからないんですけど」そう言って、高校生の武蔵は振り返り帰路につこうとする。 「お願いだ。聞いてくれ、こんな人物になりたくないなら冷静になってくれ!」  しかし、高校生の武蔵は無視して帰って行った。  もうこれ以上のことは出来ないだろう。武蔵は、ポツポツと高校生の武蔵とは反対方向に歩いていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加