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『僕は、何もしませんでした』
あの、扉から戻って来た人物を思い出した。ここで何もしなければ、今までの生活に戻れる。足が少し止まる。
しかし、今までの生活に戻る気はなかった。あの退屈な自分に。
武蔵は、一直線に高校生の武蔵に向かって走っていく。
「おい、そこのお前!」
「はい?」高校生の武蔵は不機嫌そうに、武蔵を見る。
「お前、もっと冷静になれ!」武蔵は大声で発した。
「はい?なんなんですか?」
「未来のお前だ。お前はこれから、親父と口論になって、親父を突き飛ばして、寝たきりにさせてしまう。そんなお前に未来はないぞ!」
「意味わからないんですけど」そう言って、高校生の武蔵は振り返り帰路につこうとする。
「お願いだ。聞いてくれ、こんな人物になりたくないなら冷静になってくれ!」
しかし、高校生の武蔵は無視して帰って行った。
もうこれ以上のことは出来ないだろう。武蔵は、ポツポツと高校生の武蔵とは反対方向に歩いていた。
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