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扉を開けると、地下につながる階段がある。ライトも階段の足元にしか着いておらず、慎重に歩いて降りなければならない。
カードキーと指紋認証、顔認証を終え扉を開ける。
部屋に入り、「電気付けて」武蔵が言うと、全ての電気が一斉に着いた。この魔法を使えたような爽快感だけは、たまらないといつも感じる。
気持ち良さも束の間、仕事が始まるのか、という嫌悪感が全身に流れ出す。
手を地面と並行に横にあげ、左右に二回空気を殴る。これが彼のやる気スイッチなのだ。これをやると数時間は嫌なことは忘れられると思い込んでいる。
電気をつけた部屋には、入ってくる扉以外にもう一つ扉がある。六畳の部屋には一つの机と椅子、扉が二つ存在する。この部屋にはそれしかない至ってシンプルな作りになっている。
武蔵は、この部屋の受付をしている。受付といっても簡単である。
1日に一人か二人の来客に対応するだけだ。こない日もある。
内容もいたって簡単で、来客が言う年月、日にちを聞きパソコンに入力し、扉を開けるだけで終わる。しかし、この仕事の内容は国家機密で、家族でさえも仕事内容は言えない。
それを我慢するだけで、サラリーマンの1.5倍の給料がもらえる。こんな美味しい話はない。
国家機密だというが、武蔵には全く興味がない。知ろうとすら思えない。だからこそ選ばれたのかもしれない。
しかし、強いて言うならこの中に入った人は必ず帰ってこない、ということだ。地下であるこの部屋には、どこにも行き場がないはずなのだが。
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