週末のブルース 1

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週末のブルース 1

 金曜の夜は、行きずりの相手と寝る。  SNSにそういうコミュニティがあって、「今夜すぐ会える人」を探せばいい。そこにいるのはヤリ目的の人間がほとんど。自己紹介から始まる面倒くさいやり取りなんてしなくていいし、会ってホテルに行ってセックスしたらそれでOK。みんなやっていることだし、俺も長年やってきたことだし、いまとなってはもう後ろめたさも何もない。  しかし今日はいつもとちょっと違った。セックスした後で、相手が自分は十代だと言い出したのだ。  俺は開いた口が塞がらなかった。 「えっ、じゅ……、えっ?」 「じゅうはっさい」  彼はにっこり笑って言った。  確かSNSのプロフィールでは二十歳となっていたはずだ。ちょっと若過ぎるとは思ったものの、今日は他によさそうな相手はいなかった。だから仕方なく、若い子の肉体が好きなわけではないんだと自分に言い訳しつつ、この子に声をかけたというのに。  本当に十八なんだろうか? 体格はいいし、いろいろとその、立派で、上手だったし、こちらとしてもかなり満足させてもらったのだが。  最近の子は怖い。  俺は苦し紛れに言う。 「年齢詐称はよくないぞ」 「おっさんこそ三十八って言ってなかった? 免許証見たけど四十三だろ」 「免許証? いつ見たんだ?」 「さっき、おっさんがシャワー浴びてる時。四十三にもなって十八のガキに突っ込まれてヒィヒィ言ってるなんてひどいね」  このガキ。許さん。 「十八でこんなことしてるのも相当ヤバいんじゃないのか」 「そう? おっさんこういうのデビューしたの何歳だった?」 「……二十」 「じゃあそんなに変わらないじゃん。大丈夫だよ、どうせ誰も気にしないし」  そう言う口ぶりは覚えがあった。俺も同じようなことを、二十三年前に言っていたものだ。当時の相手だった、行きずりの男に。  ――どうせ誰も気にしないよ。  俺がどこで何をしていようが、気にする人間などいない。自分がこの世にひとりきりのように思えて、余計に誰かのぬくもりを求めた。そのくせ寂しさを認めるのが嫌で、粋がって、強がって、恰好つけてばかりいた。  本当はずっと特定の相手が欲しかったし、誰かにそれでいいのだと頷いて欲しかった。  俺はスーツの内ポケットから名刺を取り出した。その裏にプライベートの電話番号を書き入れる。 「やるよ」  彼は目を丸くした。 「うっそぉ、名刺とか初めて見た。うっわー、何これ、変なの」 「悪かったな。少なくとも俺の世代じゃあ必須アイテムなんだよ」 「ふうん。まあ、もらっとくわ。また相手してくれるってことでしょ?」  俺はため息をついた。 「あんまり大胆に遊ぶなよ、十八歳」 「えー、やだ。学校卒業したらもっと遊びたい」 「はあ? ……ちょっと待て、お前、学校って……まさかとは思うが、高校生か?」 「うん」  前言撤回。  やっぱり今時の若い子は恐ろしい。
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