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週末のブルース 9プラス半分
金曜日なのにつまんねー。
ほんとなら明日は温泉のはずだった。なのに四時くらいにトモちんから電話が来て、明日だめになったって言われた。
「母親が骨を折ったらしい。ちょっと手伝いにいってくるから、悪いけど温泉はまたにしよう」
「えー!? またっていつ?」
「そうだな、来週もどうなるかわからないから、再来週とか……。とにかく、また連絡するから」
いや、トモちんから連絡してきたことねーじゃん。
「明日の夜とか何してんの?」
「明日は実家に泊まる。俺の母親はお前のばあちゃんくらいの歳だからな、たかが骨折でもおおごとなんだ」
「あー……もー……わかった。おかーさん早く治るといいね」
「ありがとう」
で、いま、家。
明日だめになったからって何もまっすぐ帰らなくったってよかったんだよな。だって、金曜日だし。トモダチと出かけるとか、SNSでヤる相手探すとか。
ねーよ。
トモちん、来週もどうなるかわかんねーって言ってたよな。再来週も約束したわけじゃねーし。
あー、つまんね。
おかーさんが骨折ったって、すげえ大変なのかな。骨折った時って何食えばいいんだろ。ヨーグルトとか? 牛乳?
よくわかんねーから、俺はスマホを手に取った。んで、久しぶりににーちゃんに電話した。にーちゃんは社会人だし、きっとなんか知ってるだろう。
「なー、にーちゃん、骨折った時って何が効くの?」
「お前、骨折ったのか?」
「や、俺じゃなくて彼氏のおかーさん」
「は?」
「彼氏のおかーさん」
「ああ……そう……。俺も骨折ったことねーからよくわかんねーけど、カルシウムじゃねーかな」
「おー。じゃあサプリでも差し入れしとくわ。ありがとー」
よし。
出かけよう。
ドラッグストアでカルシウムのサプリを買って、トモちんにメッセージを打った。
『明日ちょっとでも会える? なんか骨にはカルシウムかなってサプリ買ったんだけど』
返事が来たのは、家に帰ってからだった。
『医者から薬が出てるから、サプリはいらないんだよ。でもありがとう。せっかくだから俺が飲むかな』
『そーなんだ。じゃあ置いとくから合鍵ちょーだい』
それっきり、トモちんからは返信がなかった。
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