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週末のブルース 3
不良高校生が、俺のベッドでくつろいでいる。
一応説明しておくが、この「不良」は「ヤンキー」という意味ではない。「品行方正ではない」「不健全だ」「なんなら不可高校生でもいいんだぞ」「一回補導でもされておけバカ」というくらいの意味だ。
裸で寝そべるその姿ひとつとっても、傍若無人で、傲慢で、身勝手そのものだ。なんだってまた俺はこいつを家に上げてしまったのか。我ながらバカだった。
「ねえ、おっさん。俺、喉渇いたんだけど」
そいつが言った。
ああ、それはつまり俺に飲み物を取ってこいと言っているんだな。
ふざけやがって。
「キッチンで水でも飲め」
「水道水まずいからやだよ。ジュースとかないの?」
「ない」
「しょうがないなあ。次はちゃんと買っておくんだよ?」
最高に腹の立つ言い方だった。そんな上から目線のむかつく口調が自然に出るなんて、こいつはきっと他人を怒らせる天才に違いない。そもそもジュースが欲しかったならさっきゴム買った時に言えよ。後先考えない奴だな。さすがガキだ。
クソガキはパンツも穿かずにキッチンに向かった。もちろん前を隠すなんていうこともない。恥じらいというものは持ち合わせていないらしい。
他人の家だというのに勝手に食器棚を開けて、勝手にグラスを取り出したと思ったら……。
驚いた。水をふたり分持って戻ってきた。
「あんな喘いだんだし、おっさんも喉渇いたでしょ?」
黙れボケ。ちょっとは人間らしい優しさもあるのかと思った俺が間違っていた。
「飲んだら帰れよ」
「えっ、なんで? 泊めてくれるって言ったろ」
「お前、親に連絡してないだろう。警察に通報されでもしたら俺が捕まる」
「親は気にしないから大丈夫だって」
ああ、イライラする。俺はこめかみを押さえた。
「あのな、俺が気にするんだよ。親が気にしないとしても、連絡だけは入れておけ。いいな?」
奴はむくれる。
「はいはい。未成年だってわかってもヤっちゃうくせに、そういうところはうるさいんだな。面倒くさい」
またしても頭に来る台詞だった。
「お前がヤりたがったんだろうが。よく父親くらいの歳の男相手にそんな気になれるもんだ」
「大丈夫だよ、おっさん歳の割にかわいいから。俺、年上好きみたいだし」
「何を言ってるんだ。そう言えば俺が喜ぶとでも思ってるのか」
「あれ? 嬉しくないの? マジで好きだよ?」
「いい加減にしろ」
なんなんだこいつは。
嘘をつくな。十八なんだぞ。もう人生は下っていくばかりのおっさんを、かわいいだの好きだの思うはずないだろう。
「本当なのになー。なんなら二回戦突入したいんですけどぉ」
やめろバカ。若いって怖えな。
俺は聞こえないふりをして布団を被った。ヤリチン高校生が背後から腕を回してきたが、頑なに振り返らなかった。
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