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「三崎、ここでは俺を常務と呼ぶな。
俺は中澤コーポレーション常務として、ここにいるんじゃ無い。
あくまで中澤和興、個人として来ている。
正人とは、そういう間柄だ。」
「分かりました。
では、中澤さんと呼ばせていただきます。」
「いや、和興でいい。」
えっ、常務を名前で呼ぶなんてこと、無理だ。
「常務!それは…。」
「常務と呼ぶなと、言っている。」
「あっ、す、すみません!か、かずおき、さん?」
常務、いや、和興さんは頷いた。
そして今、私は、
私が愛した男と、無言の対面を果たしている。
生前の逞しくがっしりとした体格は見る影もなく、痩せこけた頬は土気色をしていた。
しかし、静かに眠るような表情は穏やかだった。
「正人…、本当に…、
なんでこんなことに、なってしまったのよ…」
まだ、27歳だ。
これから、やりたいことが沢山あったはずだ。
私と別れたのは?
もしかして?病気だったからなの?
なんで、言わなかったのよ!
何で?
何でなの!
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