はじまり

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ここは?医務室? まだ頭がぼんやりしている。 「目が覚めた?気分はどう?」 「だ、大丈夫です。」 女医の問いかけに答えた。 「あなた、眠ったまま泣いていたわ。 強いストレスを受けたのが原因かな、 今日は大事をとって、家でゆっくり休んではどうかしら?」 医師に言われたが、帰るつもりはない。 「常務に聞かないと!」 「常務? 今日は無理ね。 午後から、急いでお出かけになったわよ。」 そうなのか、 でも、どうしたらいい? 「あの! 常務のご自宅をご存知ないでしょうか?」 「個人情報よ、無理だわ。」 「ご存知なんですね! 決して、悪用したりしません。 お願いします。 聞きたいことが、聞かないといけないことがあるんです。 でないと、私は、一歩も前に進めないんです。 お願いします!」 私は、深々と頭を下げてお願いした。 私の様子を見て、小さくため息を吐いて女医は言った。 「分かったわ。 でも、私の口からは教えられない。 だけど、私の兄がその近所に住んでるの、 兄の住所なら教えてあげられるわ。 後は自分で探せばすぐに分かる、イヤでも目に入る大豪邸よ。」 「ありがとうございます。」 再び、私は女医に頭を下げた。
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