はじまり

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会社を早退した私は、中澤常務の家を探した。 女医の松永清花先生に教えてもらった住所付近に辿り着いたが、先生のお兄さんの家を探すまでもなく、中澤家は簡単に見つけることが出来た。 大邸宅という言葉が相応しい豪邸だ。 この屋敷の中に私のアパートの部屋が何室入るだろうな? 考えるだけ無駄だな。 門前でしばらく佇んだが、大きな深呼吸をした後、インターホンを鳴らした。 「はい、中澤でございます。」 「突然、すみません。 中澤コーポレーション、営業部営業一課の三崎と申します。 中澤常務は、ご在宅でしょうか?」 「和興様は外出されていますが、」 「何時頃にお帰りになるか、分かりませんか?」 「すみません、 お帰りになる時刻は聞いておりません。」 「分かりました。 もし、中澤常務がお帰りになりましたら、三崎が来たと伝えていただきたいのですが?」 「はい、承知しました。三崎様がおいでになったとお伝えしておきますね。」 「ありがとうございます、失礼します。」 はぁーっ、ダメか! 中澤常務は、正人とどういう繋がりがあるんだろう? 私はどうしたらいい? 正人が本当に亡くなったのなら、 最後に一目だけでも会いたい。 でも、まだ信じたくない。
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