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回顧 吉崎正人という人
正人との出会いは、大学1年の頃だった。
私はサークルに入る気もなかったので、色んな勧誘にも全く興味を示さなかった。
ただ、友人に頼まれて断り切れずに、サークル主催の飲み会に連れて行かれことは何度があった。
その最初に参加したサークルの飲み会に正人はいた。
目立つ人だった。
容姿だけでなく、独特のオーラのような存在感がある人で、その場にいた女子学生が正人を見て騒いでいたのを覚えている。
バイトが忙しくて時間的に余裕がない里穂は、サークルに入会することも無く、正人とも学内でもたまに顔を見る程度だったので、個人的に親しくなる事はないと思っていた。
そんなある日、正人が里穂の前に現れた。
「三崎さん、サークル入んないの?」
「はい?私、最初から入らないって伝えてますけど? バイト忙しいんで、すみません。」
「あっ、待って!
俺、同じ1年の吉崎正人、
俺さ、君が入るって聞いたからサークル入ったんだ。
なのに、全然来ないから気になって。
友達に聞いてみたら、サークルに興味ないみたいらしいって言ってた。」
「その通りです。
すみません、私に言われても困ります。
バイトに行かなきゃいけないんで、ゴメンなさい。」
「もうひとつだけ!」
彼は私の腕を掴んで離さない。
「バイトはどこで?」
何なの?この人!
言うまで、離さないつもりなの?
ため息混じりに言った。
「駅前のカフェですが、何か?」
「いや、いい。」
吉崎はそう言って、ニカッと笑った後、
里穂の腕を離した。
変な人。
だけど、キレイな目をしていたな、
キラキラしてた。
これが、初めて会話した時の正人の印象だった。
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