5575人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
弟の恋人
俺は中澤家の長男として、幼い頃から英才教育を受けて来た。
誰よりも優秀でなければならなかった。
祖父母の厳しさは異常だった、それも全て中澤の家の為だ。
多忙な父とは会話することも滅多になく、幼い俺は毎日をほぼ1人で過ごして来た。
家庭教師や家政婦が世話をやいてくれたが、身内でもないのに煩わしいと思っていた。
母親がいなくなってからの俺は、孤独だった。
幼い頃の俺は、いい子にしていれば、いつか母が帰って来てくれると信じていた。
しかし、母が戻ることはなかった。
俺は誰からも愛されていない。
母親さえも、俺を捨てて出て行った。
愛されたことがない俺は、誰も愛することはなかった。
幼い頃から優秀と言われ続け、当然、大学まで日本のトップレベルだった。
ただ、人間関係は希薄だった、深入りするのも深入りされるのも苦手だった。
人間関係全てが利害関係から成り立つものだった。
しかし、そんな俺が大学卒業後に日本を離れて アメリカに行くことになり、8年間のアメリカでの生活で、その国が俺に合っていることが分かった。
幼馴染み以外で、初めて親友と言える男に出逢うことが出来たのも、そこがアメリカだったからだ。
日本に帰ることを躊躇していた俺だったが、帰らなければならない理由が出来た。
こんな俺にも大切な奴はいた。
弟の正人だ、兄弟愛なんか分からないし、
最初は、血が繋がっているかどうかも分からない弟だったが、俺はアイツを幼い頃からよく知っている。
俺を慕っている正人に異変があったと知り、帰国を決意したんだ。
アイツは俺の弟だ。
最初のコメントを投稿しよう!