弟の恋人

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弟の恋人

俺は中澤家の長男として、幼い頃から英才教育を受けて来た。 誰よりも優秀でなければならなかった。 祖父母の厳しさは異常だった、それも全て中澤の家の為だ。 多忙な父とは会話することも滅多になく、幼い俺は毎日をほぼ1人で過ごして来た。 家庭教師や家政婦が世話をやいてくれたが、身内でもないのに煩わしいと思っていた。 母親がいなくなってからの俺は、孤独だった。 幼い頃の俺は、いい子にしていれば、いつか母が帰って来てくれると信じていた。 しかし、母が戻ることはなかった。 俺は誰からも愛されていない。 母親さえも、俺を捨てて出て行った。 愛されたことがない俺は、誰も愛することはなかった。 幼い頃から優秀と言われ続け、当然、大学まで日本のトップレベルだった。 ただ、人間関係は希薄だった、深入りするのも深入りされるのも苦手だった。 人間関係全てが利害関係から成り立つものだった。 しかし、そんな俺が大学卒業後に日本を離れて アメリカに行くことになり、8年間のアメリカでの生活で、その国が俺に合っていることが分かった。 幼馴染み以外で、初めて親友と言える男に出逢うことが出来たのも、そこがアメリカだったからだ。 日本に帰ることを躊躇していた俺だったが、帰らなければならない理由が出来た。 こんな俺にも大切な奴はいた。 弟の正人だ、兄弟愛なんか分からないし、 最初は、血が繋がっているかどうかも分からない弟だったが、俺はアイツを幼い頃からよく知っている。 俺を慕っている正人に異変があったと知り、帰国を決意したんだ。 アイツは俺の弟だ。
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