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第一話 千年に一人の少女
「次は国宝の宝箱が展示されている特別展示室へ移動しまーす」
解説してくださっている学芸員のお姉さんが、私たち九坂下中学の生徒に向けて言う。
「宝箱ってだけでもワクワクするのに、国宝とかヤバイじゃん」
あっちゃんが楽しそうな顔をしてこっちを見た。
「中にはどんなものが入ってるんだろう」
和歌ちゃんは声を弾ませる。
九坂下中学一行は、二クラスだ。その七十人ちょっとが自動で動く歩道で移動する。その途中の壁は絵巻のようになっていて、千代京の歴史を知ることができた。
近代的だけど、和を感じるなぁ。
国立博物館って堅苦しいイメージだったけど、こんなにワクワクするところなんだね!
進んでいくうちに、視線の先に「特別展示室」と書かれたパネルと大きな扉が見えた。学芸員のお姉さんがその扉をゆっくりと開く。
扉が開いたとたん、弱い静電気のような刺激を全身に感じた。特別展示室に入りがたくなり、端の方から中をそっと覗いてみた。
――何、このピリつく感じは。
広い空間で、天井が高い。壁側にも様々な展示物はあるが、中心に置かれている大きな展示ケースが一際目を引いた。その展示ケースの中にある煌びやかな箱こそが、国宝の宝箱だろう。
「こころちゃん、どうして入らないの」
出入口で立ち止まったままの私をあっちゃんと和歌ちゃんは不思議そうに見ている。
「な、なんか、体中がピリピリしないっ?」
今まで感じたことのない痺れに、私は戸惑っていた。二人は体に違和感はないのかな。
「別に何ともないけど?」
「私も平気なのです」
軽快な返事からして、二人共普段と変わりなさそうだ。
「……変なこと聞いてごめん、何でもない」
一体どうして私だけ……。
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