第一話 千年に一人の少女

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 あっちゃんと和歌ちゃんは不思議そうな表情のまま、特別展示室へと入って行った。 「――そして予言によりますと、今年がまさしくその年であると――」  学芸員さんの国宝についての解説が始まったようだ。あちゃ~出遅れちゃったよ。出入口でもたもたしているうちに同級生は全員入室したらしい。  痺れなんて気にする程のことじゃないよね。特別展示室の中へ進もっと。  ――――ガチャッ――――  入室した瞬間かすかに鍵が開くような音がした。  そして突如、バリーンという鼓膜が破れそうなほどの音が響く。  国宝の宝箱を収納するガラスケースが派手に割れた。  特別展示室全体にガラスの破片が散らばる。 「キャアアアアアア」  大勢の同級生の女子たちが、恐怖で怯えるように悲鳴を上げる。  私はガラスケースに視線を向けた。  開いてる、宝箱が!  びっくりしすぎて腰が抜けた。  あの宝箱には誰も触れられなかったはず。なぜなら、ガラスケースに入っていたのだから。それなのに開くなんて……。 「に、逃げろおお」  誰かの叫びにつられて、同級生たちは一斉に特別展示室から出ようとする。  特別展示室の出入口付近には、さっきの物音を聞いて野次馬が集まってきていた。そこへ同級生たちが逃げようと突進する。もうしっちゃかめっちゃかな騒ぎだ。 「怪我するからじっとしてろッ」  普段は良く通る山田先生の声すら、叫び声や足音でかき消された。 「怖いよおおっ」 「何事だッ⁉」 「死にたくねぇぇぇ!」 「私たち何もしてないのにッ」 「さっきすげえ音したぞ⁉」 「ガラスがっ、ガラスがあっ!」  皆パニックになっている中自分だけは落ち着いていたいけれど、すっかり私の心も恐怖に蝕まれていた。  逃げたい。怖い。   家に帰りたい……! 怖い!  パパママ助けて! 怖いよー!!  せめて騒音から逃れようと耳を塞いだ。胸の鼓動がうるさくて仕方がない。 「そんなまさか……っ」  学芸員のお姉さんは声を震わせながらそう言うと、ずれていたメガネをかけ直して人混みへ駆け出した。 「すみません通して下さい! 館長大変ですーっ、館長―っ」  学芸員さんが走り抜けるヒールの音と混ざって、私の鼓動が激しくなっていくようだった。  国宝と称されるあの宝箱がひとりでに開いた。開く時に蓋がガラスケースに当たり、ケースが粉砕したのだろう。  とんでもない出来事だ。  私が近付いた途端に、こんなことになるなんて。
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