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国立博物館がある方向へ進んでいくと、前髪で目がほとんど隠れている不気味な雰囲気の男がいた。高校生くらいに見えるけど煙草をふかしている。
あの人の傍を通るのちょっと嫌だなぁ。引き返そうかな……いや、別にそこまで用心しなくてもいっか。通過するだけだし。
早歩きで小路を進む。その男の傍を通り過ぎようとした時だった。
「おーい、そこの天然パーマ」
前髪が長い男はダルそうに言葉を発すると、煙草を地面に投げ捨て靴の裏ですりつぶす。
「……私のこと?」
「他に誰がいんだよ」
――そう、私は天然パーマだ。
くせ毛の人あるあるじゃないかな。美容院でくせ毛の相談をすると、大抵くせ毛を活かした髪型を提案されること。そしてその提案に乗っかって、思い通りの髪型にならなかったこと。私もその経験者の一人です。
この天然パーマのせいで、思い通りの髪型になったことがない。十三年にも及ぶ長い人生で、ずーっと天然パーマに悩まされてるの。
「天然パーマは千代京が地元か?」
確かに天然パーマではあるけど、はっきりと『天然パーマ』と呼ばれることにはムッとする。
「修学旅行で関東から来た。私に何か用?」
ぶっきらぼうにそう答えると、前髪が長い男はフフッと薄気味悪く微笑む。そしてポケットから何かを取り出した。
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