序章

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「ケガはねぇか?」  しゃがんで片膝をつき、目線の高さをなるべく私に合わせるようにして尋ねてくれる。 「は、はい。死ぬかと思ったけど……」  すごく怖かったよ。制服のスカートの裾を握っている手が小刻みに震えてる。 「ド平日の昼間に制服でこの辺りをうろついてるってことは、修学旅行生か?」  私は静かに頷く。 「今年になって千代京はどんどん治安が悪くなってんだ。他所から来たっつーだけで狙われることもあっから、路地裏は通らねぇ方がいいぜ」  サラサラ黒髪お兄さんはそう忠告し終えると、竹刀をケースに入れ始めた。 「あの、どうしてそんなに治安が悪くなってるんですか?」  どうしても気になって、疑問をぶつけてみる。 「今年があの予言の年だからに決まってんだろ。千年に一人の少女を利用して自分勝手な願いを叶えてもらおうとする、私利私欲にまみれた奴が腐るほどいるからな。……でもその本人じゃないのに狙われるなんてたまったもんじゃねぇな」  予言の年? 千年に一人の少女? 何がなんだかさっぱりわからないぞ。 「予言ってどんな?」 「えっ、あの予言を知らねぇのか⁉」  お兄さんは竹刀を仕舞う手をストップさせ、信じられないといった顔で私を見る。その予言を知らないことがそんなに珍しいのかなぁ。  
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