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「――っていうことがあったんだけど!」
無事に友達二人と合流できた私。国立博物館の庭にある噴水の傍のベンチに腰掛けながら、さっきの出来事について熱く語っていた。
「ショーウィンドウの着物を眺めてたらいつの間にかこころちゃんがいなくなっててかなり焦ったけど……そんなことになってたんですね!」
頭が良くて落ち着いた性格の和歌ちゃんが、いつになく驚く。
「まるでピンチの時に助けに来るヒーローみたいじゃ~ん!!」
人気アイドルグループのファンでミーハーな性格のあっちゃんは、超ハイテンションになっている。
「剣崎さんと何か話しました?」
「ううん、大したことは何も。すぐいなくなっちゃったから、お礼言いそびれたし……」
命の恩人ともいえるほどの人に「ありがとう」すら言えなかったことが心残り。
「ねーねーどんな人だった?」
あっちゃんからの質問に出かかった言葉を飲み込んで、少し考えを巡らせる。ジャージにサンダルって最高にダサいし、口調がちょっと古臭い感じかしたんだよね。でも……。
「……かっこよかった」
結局、これ以外の言葉が見当たらなかった。二人とも目を丸くする。
「えーっ、マジで⁉」
あっちゃんは、そう叫んで前のめりになった。
「落ち着いてあっちゃん」
和歌ちゃんは冷静な口調で言い聞かせ、さらに言葉を続けた。
「こころちゃんは、その時頭を強く打ってカッコイイの感覚がちょっとずれたのかもしれませんな」
「な……っ」
ちょいちょい、言ってくれるじゃないか。
「それもそうだね。はー、だいたい話が上手すぎると思ったんだよ。危機的状況でイケメンに助けてもらえるなんて~」
反論する間もなくあっちゃんがそう答え、二人納得したように頷きあっている。
「いや、確かにかっこよかったはずなんだけど」
思い出そうと記憶を手繰り寄せていると、あっちゃんに頭を撫でられた。
「たんこぶできてないか確かめてあげる。……あれ、よくわかんないなぁ」
すると和歌ちゃんも同じように私の頭を触り始める。
「天然パーマがボリュームありすぎて頭の形がわかんないですね~」
二人して私の髪をわしゃわしゃしてくる。面白がっているのだろう。
「こらー、やめてくれー」
もぉ、まとまりのない髪が余計ボサボサになるじゃない。あーあ、剣崎惺さんみたいなサラサラな髪になりたかったなぁ。
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