シリウスの伴星

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静寂主義(キエティスム)ってのは、 受動的な精神態度のことで、 何の行為もいたしません てこっちゃないだろ」 同い齢の青年は言った。 「半井は情態と態度というか、昼 と夜を使い分けてるって気がす るんだよな」 「誰だって使い分けてるだろう?」 「はいはい、昼は働く、夜は寝る。 と、逆もありか」 今思うと、彼はこの少年に似てい た。いや、この子が天羽に似てい るのかもしれない。 理由は簡単で、ふたりを選んだ人 物が同じだからだ。 ポケモン好きの子供は、ピカチュ ウ型のワゴン車以外、滅多にトミ カのモデルカーを買わない。 趣味の徹底した大富豪は、ダ・ヴ ィンチの一幅に4億ドルを出し、 色違いのフェラーリを、宮殿に並 べる。 愛人のタイプは似かよってしまう。 「あ もう?」 「天の羽で、あまはね。 名前は輔で、たすく」 長髪、ロンT、ジーンズ、スニー カー。初見では、名前からイマジ ネートされる大天使ラファエルの 威厳も風格も、あったものではな かった。 「なからい?」 「名前は大貴で、ひろたか」 まるで小学生の自己紹介だった。 「たすくくんは言いづらいのか、 俺はあまり他人(ひと)に個人名 で呼ばれたことがない」 「僕は、ひろきと呼び違われるか ら、姓名の方を覚えてもらうよ うにしてる」 「大学生?」 「院」 「はあ? あ、俺、一浪 したんだわ、です。はい」 それで同い齢なのに序列ができた。 それに招喚を受けたのは俺のほう だし、と天羽は思い、半井大貴の ノーブルな雰囲気に呑まれた。
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