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初めて天羽と会い、ビジネスホテ
ルに部屋をとって一緒に風呂を使
ったが、当時はお互いひどく緊張
して、部屋のバスルームは公衆浴
場と大差のないムードになってい
た。
あの時は、相手のからだを洗って
やろうなんて考えもつかなかった。
相手に親しさを求めているのか、
親密さを求めているのかの判断が
つかず、フレンドとコンパニオン
の境をウロウロしていた。
それでもふたりしてスクウェアの
ベッドに納まりBGMの選曲につ
いて意見を交わしていた時、ふい
に天羽が大貴に唇を重ねた。
大貴は身をひき、怯えた猫によく
似たしぐさでベッドから飛び降り
た。
「ホントに初めてだとは
思わなかった」
天羽は髪の毛をかきあげながら、
パートナーは神経質でメンドクサ
イ奴だ。
と、大貴に評価をくだした。
そして間をとった表現のつもりで
「ムズカシイ奴だな」
と口にした。
それで大貴の方は頑になり…
キスを──折角の、あの甘い恋人
たちの挨拶をすっかり拒んだ。
「半井、あんたを批判したん
じゃない。ましてや攻撃
したんじゃない。俺、ボヤいた
だけなんだってば」
(つむじ曲げやがった)
「初めてじゃない」
大貴は素裸でベッドの脇に立ち、
天羽を見おろした。
天羽の方は相方に、こうシリアス
な表情で、過去にいたしたコトの
順番を云々されるのも敵わない。
と思い
「だって、最初は、シャワー浴び
てる間に相手が消えてたんだっ
たよね?
俺なんかさ、会ってお茶してる
間にフケられてた。
トイレに行くつったまま 帰って
来やしない。先に電車の改札口
通って振り返ったら、相手がU
ターンしてるとかあって…
なら初めから付き合うんじゃ
ないっつの。
だから、あの、今回俺も初めて
のようなもんだから」
「……」
「聞いてやしない」
(スネてる。こいつ中身まるきり
女子なんじゃね)
天羽にしても女を知らなかったか
ら大口は叩けないが、妹がふくれ
る時のパターンが大体こんなだ。
ちがうもん…
そうじゃないもん…
「そうか。2回目だったんだ。
半井、床に戻ってくれない?
進行させよう」
このままでは、飛んできたボール
をセオリー通り右手を添えて正面
から確実に受けたのに、あの場は
逆シングルで捕れと、後からコー
チに責められ続ける球児のようだ。
と思い
「半井、気に障ったなら謝る」
言ってベッドを反対側から降り、
回り歩いて空のベッドに向かって
立ちつくしている大貴の背後に立
った。
その ほっそりした からだつきか
らか、同い年で、同じ位の背丈な
のに、大貴は15、6才の少年の
ように見えた。
もっと言えば、相手は罹災者のよ
うに心もとなげだった。すると
「後ろに立たないでくれないか?」
鬼神も凍りつくようなクールな声
が飛んできた。
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