81人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヒロさん、少しだけ屈んで。
うまく結べないから。それに、
そんなに怯えないでくれます?
俺は、ヒロさんの頭に
ボリュームを出そうとしてる
だけですから。
ほどよくしてんです」
額と額がわずかに触れたような気
がした。
結び目を大きくしといたから、こ
れでメットにうまいこと納まるだ
ろうと言って
「パイレーツみたいだ」
陽が笑い
「新米のね。船に乗りたての…」
と大貴が続け、少年の目を見ると、大貴の瞳を覗きこみながら
「いや、そこは尻でしょうよ。
って、ヒロさん、俺、もう
ヤバイことになってる…」
陽は切なそうな声を上げた。
そして右手を拳に固めると、自分
の口元に持っていき、犬が自分の
身を噛むように親指の腹を噛んだ。
昼日中に、直線と灰色の建物の前
で、着衣の男性を前に勃ちあがっ
てしまう現象を、誰かに納得のい
くように説明してもらいたい。
と、陽は思い、同時に目の前の男
にそれをなだめてもらえる幸運を
のがしたくないと考えて
「俺、もうヒロさんのこと
好きになってる」
と、青年に ささやいた。
(これは男の手口だ)
大貴は思った。
男は寝るためになら何だって言う。
16才の少年に、生理的なメカニ
ズムによる昂りの事を訴えられているまでは分かったが、
24才の自分はどうしてやればい
いのだろうか。
「スルのかシナイのか、
ちゃっちゃと
決めてほしいな 」
親しさを飛びこえて、親密さにな
だれこもうとする少年の率直さと
性急さは不快なものではなかった。
大貴には、強要でなく哀願のよう
に感じられた。
だが…
「僕だって君としたいけど…
16才はさすがにちょっと。
18、9かと思っていたから。
雑誌には10代後半って
載せてたじゃない?」
「俺、ウソはついてないですよ」
「でも10代半ば。未成年。
性交同意年齢が13才とは
いってもヘタすると犯罪だよ。
それに君が同性愛者じゃない
って言うんだったら、僕ら
実際にできるの?
それとも君は
両性愛者なの?」
「いや、ヒロさん、どういうわけ
だか、俺は男とやりたいなんて
一度も思ったことがない」
「でも」
少年は魔法の言葉を発した。
最初のコメントを投稿しよう!