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「むしろ、おおっぴらだったのが
幸いして、中学までは周りも
面白がってっていうか、大目に
見てくれてたんですけど、
高校に入ってこれが男子校で、
タイプの先輩を追っかけ
まわしてたら
放校になっちった。
男子校はパラダイスだろうって
思われがちなんですけど、
あそこは天国という名の地獄に
近い。恋愛って俺に言わせりゃ
拷具に等しい。えらく腹が
減ってるのにいろんなごちそう
を 見せられるだけってのは」
「サンプルを食えと拷問される
よりはマシって思うけど…」
「世間って、愛という名の
富栄養化状態ってか、
恋愛天国という名の性愛地獄
ですよ。だって恋愛はひとり
でだって出来るけど、性愛には
どうしたってパートナーが
必要ですもん。サンプルって
いうのは、女ってことですか?
俺は女を好きとも嫌いとも
いえないけど、尊敬している
女性はいますし、友人として
好きな女性もいます。恋愛相手
でも性愛相手でもないけど」
「止めよう…」
大貴がつぶやいた。
「ヒロさん、俺、
うるさくし過ぎた?」
「そうじゃない。女性の話を
されると、どうにも我慢が
ならない性質なんだ…」
「はい?
そこはサプレッション (抑制)
しないと、仁恵を疑われます」
「…だとしても。感じ方を変えら
れない。変える事ができない」
「分かりました。女性の話は
止めます。どのみち クマだの
トラだの ウマだの ホモだの
ゲイだの 俺には今ひとつ ピン
とこないんですよ」
「じゃあ、陽くんは、自分を
どうカテゴライズしてるの?」
「〈M S M〉かなぁって。
男とセックスする男
という括り。
Men who have sex with men.」
「そんなフレーズ、
どこで覚えたの?」
「二丁目発信。二丁目仕込み。
あそこは夜ごとの
頂上開催地域だから、
ピロートークもラバーズトーク
もハイレベル」
それから陽は大貴に振られた話題
を、ゴールに叩きこんだ。
「俺はちゃんと
アイデンティファイしてます。
俺のセクシャル
オリエンテーション は、
ハイブリッドなんだって」
大貴には、少年の理論が粗雑でア
クロバティックな気がした。言葉
のほとんどが二丁目に集う有識者
の受け売りだと思えた。
しかし、世界を越えて迫りくる事
態に対して、少年は自力でそれを
押し返し…少なくとも押し返そう
としていて僕はそれを避けている
…
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