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1◆ プロローグ/新しい制服
県庁所在地の中心駅からJRで4駅。私鉄に乗り継ぎ、さらに2駅。そこから20分ほど坂の多い道を歩いて、ようやく我が家に辿り着く。バスもあるけど、雨の日くらいしか乗らない。本数が少ないから待つ時間がバカらしい。
今まではそんなロケーションを殊更不便に感じた事もなかったけれど、この春から高校生になり電車通学するとなると、そのうち駅まで自転車が欲しくなるだろう。
それだけじゃない。きっと他にも色んなものが必要になるはずだ。何しろ、初めてこの町から外へ生活圏が広がるのだ。私は大きな期待とほんの少しの不安を胸に抱き、真新しい制服のスカート丈を、何度も何度も鏡の前で確かめた。
11年前、この町に小さな私と赤ん坊の弟を連れて越してきた若き日の両親も、新生活に夢を膨らませたのだろうか。たとえ今はすっかり生活にくたびれた中年夫婦だとしても。
いや、彼らは私が知らないだけで、きっと輝く人生を謳歌しているに違いない。人は誰しも自分の物語の主人公である。かくいう私もこうして、新しい物語の最初の一頁をしたためようとしている。
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