新年度一発目

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新年度一発目

「さて、2年生になったわけだが。大してやることは変わらない。筆記と実技それぞれ勉強していくだけだ。説明はもうされてるよな?」 「はい」 「よし、じゃあ授業やってくか」 学校において、1年生から2年生になったところでそう変わることは無いだろう。 敢えて言えば、人生で初めて下級生、もしくは後輩という存在が出来ることか。 幼稚園や保育園に行っていない限り下の子と関わる機会はないだろう。 行っていたとしても、関わりは薄い。 と、ここまで話してなんだが、アジャイブ魔術学校は学年越しの関わりはないに等しい。 よって、2年生になったところで本当に何も変わりがないのだ。 S(クラス)の7人はクラブ活動にも入っていないので尚更だ。 昼休み。 「はい、あーん♪」 職員室で、弁当を食べさせてもらっているライヤの姿がそこにあった。 「なぁ、自分で食うから」 「ダメです。少なくとも今日は、私があーんしないと食べてはいけないとフィオナさんからのお達しです♪」 正しくは、強要されているのだが。 誰もいなかったはずのライヤの机の右隣。 いつの間にかヨルが陣取っており、手づからライヤにフィオナ特製弁当を食べさせているのだ。 周りの先生方の視線が凄い。 「で、狙いは何だよ」 「さぁ?」 「……ヨルに手を出したら俺が出てくるぞって圧を出すためとかか……?」 「役得ですね!」 ヨルの身分は生徒の時と違い、全教師に伝えられている。 いないとは思いたいが、ヨルが戦争をした諸国連合の人間であること。 もしくは、単純に王国での後ろ盾が薄いと睨んでちょっかいをかけてくることを見越してのことだろうか。 ライヤは今回の戦争でまた1つ勲章を得た。 恐らく、次回軍に呼ばれることがあれば将官となるだろう。 平民としては異例の立場であり、その出世スピードと合わせて、最早ライヤへの失言は国から罰せられる可能性すらある。 そのライヤと仲睦まじい様子を見せていれば、ということか。 「アン王女はこのことを知っておられるのか……?」 それが新たな火種になりそうではあるが。 「よし、午後は実技だ。前に見せた魔力を手の上で動かすやつを練習してもらうぞ」 「はい! あの気持ち悪いやつですね?」 「まぁ、パッと見たらちょっと気持ち悪いかもしれんが」 確かに手の上でうにょうにょ動くものがいっぱいあるのは気持ち悪いかもしれん。 「心配するな。お前らがこんな感じに出来るようになるのは早くても5年くらいはかかるから」 魔力制御にも適正はあるとはいえ、魔力量のように才能だけのものではない。 むしろ、努力の割合がほとんどである。 でなければ、ライヤがそれを武器に出来ることは無かっただろう。 手の上で魔力の小さな球をうにょうにょと無数に動かすライヤに生徒たちは改めて尊敬のまなざしを向ける。 訓練用の火の棒くらいは消し炭にしなくなった彼らだが、未だ魔力制御は未熟の一言に尽きる。 ただスタートラインに立っただけなのである。 現状では手のひらの上に小さな魔力球を1つ作ることも難しい。 某マンガから拝借した練習法だが、理にかなっているのはライヤ自身で確認済みである。 とはいえ、他に非検体はアンくらいしかいない。 7人に成果が見られれば学園長の方から発表してもらう予定だ。 「よし、じゃあ魔力球を作るところから始めよう」 実はこの作業が意外と難しい。 普段使っている魔法であれば、魔力にそれぞれの属性を特徴づけて発現させているので発動自体は難しくない。 現に彼らも過剰威力でありながら魔法の発現自体はかなり簡単に行っていた。 だが、今回はその特徴づけがない。 素の状態の魔力は制御が難しいのだ。 ポン! 「ひゃあ!」 「失敗を恐れるなよー。どうせ失敗したって弾けるくらいで爆発するようなことは無いから。みんなの魔力量ならよりいっぱい練習できるはずだ。集中しすぎて手を自分の目の前に持ってくるのも、やめておけよ。びっくりしてウィルみたいに可愛い声を出すことになるぞ」 「先生! 意地悪です!」 ウィルは顔を赤らめて抗議する。 果たしてその原因は声を出したことへの恥ずかしさかライヤに可愛いと言われたことからの照れからか。 「お、もう時間か。一応、家での練習これはやめておくように。失敗したら弾けるくらいっていうのも俺とアンしかやってみた人がいないから信憑性は低いから、練習は俺がいるところだけにしておいてくれ」 1日目は大した成果もなく終わった。 そんなもんだ。
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