214人が本棚に入れています
本棚に追加
格付け
「イメージとしては、蛇口を絞る感じかな。今は全開放って感じだろ?」
1年目の時にS級の7人に教えていて、最終的には出来るようになった魔力制御の第一段階。
みんなに感覚を聞いてみたところ、蛇口のイメージが多かった。
普段から見慣れているものでもあるし、物理的なシステムのイメージの方が想像しやすかったらしい。
ちなみにライヤはねじを締める感覚だった。
魔力を細く強く絞っていくイメージ。
ただ、理解は得られなかった。
確かに、王族や貴族の子供がねじを締める現場を見たことがあるかと言われれば、それはないだろう。
むしろねじがどういうものかを知っているかも怪しい。
「というか、蛇口から魔力を出しているような感覚もないかもな。まずそこからだ。魔力を使う感覚を適量出るようにセーブして、それを更に絞ることになる」
「なるほど……」
ミクは話を聞いて試行錯誤をしているようだ。
「……」
対してキリトは言っていることは理解しているようだが、簡単には従いたくないというところか。
プライドが高いなとは思っていたが、ここまでくると授業の進行にも関わってくる。
「キリト、何か気に入らないことがあるか?」
「え……」
「! 先生、キリト君はこっちに移ってきてちょっとまだ慣れていないだけなんです! 私からも言っておくので……」
「それでいいかと思ってたけどな。ここまで無視されたら先生としては放っておけないな」
先生としての沽券に係わるところである。
「まだ『俺の方が強いのに』とか思ってるんだろ? 今日の放課後相手してやるからとりあえず今はちゃんと授業受けてくれないか? ずっとお前に関わっているわけにもいかないんだ」
「気にしてくれなんて言った覚えはないです!」
「学校で先生に生徒のことを気にするなって嘘だろ」
何のために先生してんだ。
「じゃあ、俺に教わるのが不満っていうのは当たりだろ? うちのクラスにも同じような事言ってるやつがいたから、まぁそんなもんなのかなとは思うよ」
「これ一生言われるんですか!?」
少し遠くで練習していたゲイルが反応する。
そりゃ一生もんだろ。
あれのせいで公開決闘なんてもんやらされたんだからな。
「今回は観客がいるわけでもないし、いいだろ? 俺に勝ったら他のキリトがこの人ならいいと思う先生のところに行っていい。それこそ、イリーナに教えてる先生にも俺が頭を下げよう」
「……本当ですね」
乗り気でなかったキリトはイリーナの名前が出た途端にやる気を見せる。
結局、イリーナに負けたことをずっと引きずってるだけだったんだな。
「頑張れー♪」
観客はいないはず。
そのはずだったがなぜか決闘や手合わせの場となるフロアより一段高いところにある観客席にはフィオナの姿が。
その隣にはヨルの姿も。
面白くなりそうだと呼びに行ったのか。
「……」
他にも無言で腕組みをして壁にもたれているイリーナ。
もう見るからに機嫌が悪い。
「頑張ってくださーい」
その前方の席にはエリアルが座っている。
どうやら彼女に連れてこられたらしい。
黒髪を揺らしてニコニコとしているが、後ろにすっごい機嫌が悪い王女を背負ってもあの余裕。
「何秒もつと思います?」
「10かなー」
「俺は先生が1分くらい持たせる気がするけど……」
何秒で終わるか会議をしている7人の生徒たち。
「王国を背負って戦うのよ、ライヤ!」
そして最前列で檄を飛ばしているなぜか駆けつけてきたアン。
カオスである。
最初のコメントを投稿しよう!