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尿意との戦い
次の日。
中々現れないなと珍しく準備して待っていたライヤだったが、あまりにもアンが現れないため遂にはまたパジャマに戻り、布団に潜っていた。
コンコン。
「ん、どうした?」
ライヤの部屋を簡単に訪れるのは3名。
その中でちゃんとノックをしてくれるのは1名だ。
「私よ……」
「……? !? アン!?」
まさかの人物がドアの向こうにいて一瞬思考が止まったライヤだが、すぐに再起動してドアを開ける。
「ふふっ……、まだ、今日よね……」
真っ白な肌を更に白くしたアンがそこには立っていた。
「一体どうした?」
「終わらなかったのよ……。ねぇ、とりあえず寝ていいかしら……?」
「そりゃ構わないけど」
ポスン。
「スヤァ……」
先ほどまでライヤがくるまっていた布団に入るなり寝息をたてだすアン。
ここまで疲れているアンを見るのもかなり珍しい。
「っておい……?」
現在、午後8時。
この様子から、寝落ちしたアンは明日の朝まで起きることは無いだろう。
となれば。
今日ライヤはどこで寝れば良いのだろうか。
「寝なくてもいけることはいけるが……」
なにせ、今日一日寝たままだったのだ。
明日1日起きておくこと自体は容易い。
だが、生活リズム的に夜に多少は睡眠をとっておきたい。
「アンが俺の家に泊まることは許されてるのか……?」
他にも王女としてのアンの行動がどうなのかという問題もある。
朝帰りだけはかなり気を遣ってないようにしてきていたが、この時間に来たという事はそこまで織り込み済みだろうか。
「とりあえず、寝床の用意を……」
グッ。
布団に倒れ込んだアンに掛布団をかけ、自分のための行動を始めようとしたライヤだが、袖を引っ張られる。
何かと思って見てみれば、寝ているアンがライヤのパジャマのシャツの袖をつまんでいた。
「……器用だな」
どうやったら寝ているまま服を掴めるんだと思いながら、離してもらおうと引っ張るが。
グッ。
「は?」
どの方向に引っ張っても一向に離してくれる気配がない。
むしろ、より強く掴まれているような感覚すらある。
「ふんっ!」
渾身の力で引っ張ってもパジャマが伸びるばかり。
「仕方ないか」
ごそごそとシャツを脱ぐ。
腕を掴まれているわけではないのでシャツさえ脱いでしまえば拘束されることは無い。
「よし」
グッ。
シャツを脱ぎ、上裸となったライヤはすぐに他の服を着ようと移動しようとするが、他の部分に引っかかりを覚える。
パッと見ると、今度は逆の手がライヤのズボンを掴んでいた。
「……それはまずいな」
ただでさえ現状、男の部屋で寝ている女性と上裸の男性がいる。
シャツを脱ぐことすら最終手段として行ったのに、ここからズボンを脱いだらパンツ一丁である。
犯罪が過ぎる。
「……」
もぞもぞともう一度アンに袖を掴まれたままのシャツを着直す。
そのままでいるのはあまりにも寒すぎた。
「今はまだいいんだけど、これトイレに行きたくなったらどうするんだ……?」
新しい拷問が開始された。
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