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日が傾いて、西日がきつくなってくると、フユシマは充電しっぱなしで熱くなったスマホをようやく投げ捨て、私を手の甲で追い払おうとする。
「ほら、時間だよ。夫のもとに、帰りなよ」
「えー。いやだよ、私、まだ、不倫してたいからさ」
私はかたくなに、フユシマの汚い床から立ち上がろうとしなかった。
「不倫、ね。お気楽でいいよね、あんた」
「ほんと、フユシマが女の子ならよかったのにね」
私はフユシマを怒らせようとした。ちがう表情が見たかったのだ。
「そしたら、わたしの旦那と、ね」
「うるさいな、勝ち誇った顔してさ」
私の意図に反して、フユシマは依然、うっとうしいものを見る瞳を変えなかった。私はかなしくなった。
「ね、私はそんな顔で見つめられるのがきらいだよ」
「だからなんだよ。早く帰れ、邪魔なんだよ」
フユシマは蹴り上げるようにして、私の腰を立たせる。そこからはいくら呼びかけても無駄だった。
仕事に行くのだろう。フユシマはシャワーを浴びに行った。
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