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会社の終わりや、休みの日に通い詰め、二ヶ月。
フユシマに恋をした熱は、なかなか冷めなかった。
嘘をついている罪悪感もどこへやら、私はいつだってフユシマに会いたいし、会えない時は苦しかった。この中毒症状について、深く考えるような思考も、完全に死んでいた。
その日は突然訪れた。
ドアを開けて、フユシマがいない日。私はどうしてもフユシマに会いたくて、仕事を抜け出してきたのだ。
そのうち帰ってくるだろうと、私は埃っぽい部屋で電気もつけずに座って待っていた。
相変わらず、生気のない空気。それがまた、フユシマのにおいを濃くするので、心地よく感じる。
スマホで漫画を読みながら、汚れた机の前で、時間が経つのを待つ。鼻をかんだティッシュを捨てようと、ゴミ袋に手を突っ込んだ。
その中身に、ふと、手を止める。
知っている塊が、そこにあった。
慣れたふうに丸められたナプキン。赤い経血がそこに染み込んでいて、くるしんで泣いているように見えた。
フユシマ?
「女の子、部屋に入れた?」
私は、コンビニの袋に冷やし中華を持って帰ってきたフユシマに、尋ねた。
「いや、いれてないけど」
「じゃあ、これ、なに?」
私はゴミ袋の中身を指差す。
フユシマの黒目がドカン、音を立てて地獄に落ちたのが見えた。
「フユシマ、女の子だったの?」
「もう終わりだ」
フユシマはコンビニの袋を床に落とした。
「不倫なんてつらいだけだ」
泣きそうな顔をしたので、私はあわてて、フユシマに駆け寄った。
「私、結婚なんてしていないよ」
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