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残暑
過去最高気温を毎年のように更新している昨今、暑い暑いと文句を垂れても三十度を越えた程度では動じなくなっていた。
お盆を過ぎてもまだ暑いこの頃じゃ、まだ海にも入れるのではないか? と思いもする。
実際海を見てみればクラゲではなく、サーファーたちが幅を利かせている。とはいえ、秋を匂わす高い波たちはファミリーで楽しむ夏は終わったと告げている。
お盆休みも終わり一夏のイベントを終えたつもりだったが、まだ残りがあると言わんばかりに故郷にもう一度戻ることとなった。
二度目の帰省を歓迎してくれたのは、隣人宅にある小さな畑。収穫を逃し成長しすぎたキュウリが涼しくなり始めた風と不快指数の高い夕暮れの太陽を浴びていた。
キュウリ畑の向こう側。広い縁側のある仏間の奥。汗をかき忙しなく動く知人たちとは裏腹に、君は畳の上で一人涼しい顔で休んでいた。紺色の浴衣が一番好きと言っていた君が味気ない白無垢を着ている。
遠くで花火大会の音が聞こえ、昔一緒に見た橙色の冠菊花火を思い出していた。
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