嗤う痴漢

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「もう、わかんないよ。とにかく…降りて!」  私は男の手を力いっぱい握りしめると、そのまま電車の出入り口へと向かった。このまま突き出してしまえば、この男とのうんざりするやり取りも終わる。  車内は相変わらずざわついていた。これだけ私がひどい目に遭っているのに、どうして誰も救いの手を差し伸べてくれないのだろう。  これが、都会と言われればそれまでだけど、あまりに冷たいし世知辛い。  私は泣きそうになりながら窓を見ると、そのまま足が竦んでしまった。
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