4人が本棚に入れています
本棚に追加
台風一過。秋晴れの休日。
今日は課外授業の為、部活は休みだと連絡があった。
急に手持ち無沙汰になった気がして、グランドに出掛けて行くのが当たり前になっていることが、少し可笑しい。
ドライブがてら、ウェアでも見に行くか…と車に乗った。
こんな休日、涼也が居たら…。とついそんなことを考えてしまう。
あの日、大事な物だから持っていて。
と手渡された紅いガラス。
小さいけれど、厚みが2センチ近くあって、花びらのような、歪なハートのような形をしていた。
ペーパーウエイトか?光にかざすと、紅の中に深い紅が何層にも重なっているのがわかる。
大事な物…。
大事な人…。
涼也にとって、 柊木塁は大事な人なのだろうか。
僕なんかよりもずっと…。
好きだと言わなければ良かった。
SEXなどしなければ良かった。
大事な物など受け取らなければ良かった。
そうしたら、こんな苦しくならずに済んだ。
いつも、ずっと想っていて、でも、ただぼんやりと、大切にしまっておくだけで良かったから。
いつか、忘れる、
涼也も忘れている…かもしれない。
多分、それでもいいと想っていたのに。
ふわふわとした存在が、急にはっきりとした輪郭を持って、手の届く、息のかかる、すぐ側に戻って来た。
戻って…来た。
僕の所に…。
それは錯覚だった?
ずっと、苦しくて、痛い。
最初のコメントを投稿しよう!