色なき風の頃

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仕事着のシャツを二枚と、ジャージを買う。 結局、行き先はスポーツショップになる。 女の子たちに人気のショップが並ぶフロアにも立ち寄って、ヘアスタイルとのバランスをイメージしながら歩いてもみたが「何かお探しですか?プレゼント?」などと尋ねられるのは苦手だ。 普通に彼女が居たら、ショッピングに付き合ったり、似合いそうなアクセの一つもプレゼントに選んだりするのだろう。 普通に…。 僕は… きっと、普通じゃない…。 ビルの二つも歩いたら疲れてしまった。 書店で美容の雑誌を買って帰った。 来た道を走る途中で、ふと「花あかしあ」へ寄ってみようと思い立った。 海岸線へと入り、崖に張り付くような道を登って行く。 駐車場は満車に近い。 ランチの後、ティータイムに賑わっているのだろう。 殆どが女性客なのは、其々のテーブルからの談笑し合う声で直ぐにわかった。 ホテルの受付に声を掛けた。 涼也と来た時に案内をしてくれた若い男性が、会釈をする。 「お庭のお席でも宜しいでしょうか」 と尋ねられ、頷いた。
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