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貴船神社の正確な創建は不明だが、天武天皇の御代には社殿を建て替えたという記録があり、その頃から既に、尊信が寄せられていた事だけははっきりと判る。  叡山電鉄の駅名のように地名としては「きぶね」だが、神社の読み方としては「きふね」であり、これは水がいつまでも濁らぬように、という願いが込められていた。 その願い通り、賀茂川の源流にあたる貴船川の水は透明で木漏れ日を乱反射させており、小さな滝の流れはガラス細工のようである。 この川に沿うように、青もみじをはじめとした木々が天然の屋根を作り、食事処の川床、二の鳥居、本宮、結社(ゆいのやしろ)、奥宮(おくのみや)が鎮座している。 貴船山の麓全体が、貴船神社を中心に一つの里を作っていた。 大達がこの地に降り立ってみるとまず感じたのは山特有の涼しさで、蒸し暑い洛中と、ここが果たして同じ京都市なのかと疑いたくなった。 二の鳥居をくぐると直後に本宮へと続く石段があり、この石段の両脇に、名高い深紅の灯篭が長く連なっていた。
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