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本宮へ辿り着くとここも観光客で賑わっており、高龗神を祀る本殿の前には長い行列が出来ている。
すぐに参拝したいのは山々だったが、他の人を押しのける訳にもいかなかった。
大達は順番が回ってくるのを待つ事にして、その前に、岩の割れ目から湧き出ている御神水へと足を運んだ。
上部には注連縄が張られており、こちらはこちらで人だかりが出来ていたのが、すぐに空いた。
「このお水で手を洗って。輝孝くん、そのままいっぺん飲んどうみ」
「はい」
辰巳大明神の勧めるままに、輝孝が竹筒から出る湧水の前に跪く。
手の中に溜めて、一口飲む彼の後に続いて大も飲んでみると、洛中の水と同様に柔らかく、なおかつ清々しい喉越しだった。
「何だか、胸がすうっとしますね。塔太郎さんも、そう思いませんか?」
「うん。さすがは御神水や。梨木神社の染井と一緒で、霊力も回復してる。輝孝さんも何か大事な事を……輝孝さん?」
期待しつつ、塔太郎が輝孝の顔を窺うと、彼は呆然とした表情で何かを呟いている。
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